相模女子大小学部
ある日のこと。日直のスピーチで「日本語より英語のスピーチのほうが得意なので、英語で話してもいいですか」という児童が現れたらしい。「正直、驚きました」と語ったのは相模女子大学小学部、英語科主任の今井麻紀先生だ。
同じキャンパス内に大学院生までが学ぶ、緑豊かで広大な敷地にその小学校はある。横浜駅から相鉄線と小田急線で相模大野駅へ。正門まで横浜駅から40分だ。思いのほか近い。ちなみに小学部は男女共学である。
年1回の英語スピーチコンテストは同校の英語教育の一大イベントだ。3年前から本格化し、1年生から6年生まで約400人の児童全員が参加する。1学期は「スキット」と呼ばれる二人一組の短い英語の掛け合いを発表。何度も練習するうちに、各ペアの持ち味や工夫が出てくる。
そこで培われた表現力を生かして2学期のスピーチコンテストに挑む。学級ごとに全員がスピーチを披露し、選ばれた代表が全校大会に出場する。テーマは「自己紹介」。基本となる文に自分自身のことを織り込む。低学年は名前・年齢・誕生日に「好きなもの」を加える。学年が上がるともっといろいろな文を足していく。6年生は最高で8文まで足し、20文までにしてよいというルールがある。この制約があるからこそ、その中でいろいろ工夫する面白さがある、と今井先生は分析する。また、このスピーチは言語としての本質を学ぶ機会にもなる。猫が大好きな子は、猫のかわいさ、猫の素晴らしさをどうやって伝えたらよいのか、真剣に考え、表現を工夫するという。
コンテストの審査観点は6つあり、事前に公表される。声の大きさ、ジェスチャー、発音、笑顔、視線、そして気持ちを込めること。それぞれに高得点を取ることが優勝の秘訣だ。今年の3年生の最優秀賞の子は、「 I like SUMO! HAKUHO is strong! 」というフレーズを最高のタイミングで決め、会場を沸かせた。たくさんの聴衆の前で豊かな表情と全身いっぱいのジェスチャーによるスピーチ動画を見て、冒頭のエピソードが納得できた。(理英会本部 中里 淳)
神奈川新聞 連載コラム