東京学芸大学附属小金井小学校 教諭 鈴木秀樹氏
神奈川新聞 2018年9月18日 朝刊掲載
7月のとある土曜日、日本マイクロソフト本社(東京都品川区)31階のセミナールームに33人の小学5年生が入ってきた。
子どもたちの机には、1人に1台ずつタブレット端末が置かれている。今から東京学芸大学付属小金井小学校の先生と児童による公開授業が行われるのだ。
この様子を見学しようと、まわりを教育関係者ら約160名が囲む。
同小学校では、かねてから進めてきた「インクルーシブ教育」の研究を日本マイクロソフトと光村図書出版の協力を得て、更に一歩進めている。
研究の中心はインクルーシブ教育における情報通信技術(ICT)活用だ。
インクルーシブ教育とは障害の有無に関係なく、すべての子どもがともに学ぶ仕組みのことだ。
以下、授業を担当した鈴木秀樹教諭に話を聞いた。
■デジタル教科書の文章読み上げ機能に対する子どもたちの反応は?
―クラスの子どもたちの多くが、以前に比べ「読む」時間に集中できると言っています。
また、わかりにくいと感じた部分を、すぐに聴き直すことができるのも良いです。
■デジタル教科書は視認性も良いとか?
―はい。文字の大きさや行間、背景色が変更できるところが優れています。
背景色を変えただけで読みやすくなると言う子もいました。
■他に効果を実感するものはありますか?
―「マイクロソフト・チームズ」というシステムによって、一人が書き込んだコメントをクラス全員と各自のタブレットで共有できます。
教室で手を挙げて発言するのが苦手な子でも、これなら意見が言えるし、みんなにそれを知ってもらえるのです。
またUDデジタル教科書体というフォントも読みやすいようです。筆書きや楷書ではなく、硬筆やサインペンを意識した書体のため、弱視やディスレクシア(識字障害)に配慮したデザインで読みやすさも実証されています。
多様なニーズに応え、共生社会の形成に向けた有力な手段として、インクルーシブ教育への期待は今後も高まるだろう。