4【学習は幼児期から】
神奈川新聞2011年12月26日 朝刊掲載
横浜で暮らして40年の歳月が過ぎた。
近くに小学校があり、登校時によく見かける。
冬なのに手袋をしない子が多い。
いつも不思議に思う。
幼児にも手袋をする習慣を付けさせたい。
ポケットに手を突っ込んで歩くと姿勢が悪くなる。
躓(つまづ)いたとき自分の身を守れない。
手袋をすれば、寒くても活動的になれる。
幼児は身体を動かしながら頭を働かせるものだ。
人間の知的な活動は、誕生した時から始まっている―発達心理学では定説だ。
ただ研究者たちの説を引用するまでもなく、稚な児の好奇心や探究心でキラキラした眼や表情を観察すれば、「頭を使っている」と、推察できる。
学習は、小学校からという考え方は変えたほうがよい。
学校教育の中心的な役割は学習=勉強だろう。
それは、「読み」「書き」「計算」の基礎・土台に、言語を駆使して、概念を操作することが重要視されるモノだ。
実は、この「言語を駆使」するための基礎工事として「聞く」「話す」がある。
豊かな体験・楽しい体験は、その行為を促し、質を高める。
体験とは、実体験もあれば、疑似体験もある。
絵本の読み聞かせが大事だと言われるのは、この疑似体験を可能にするからだ。
さて、学習能力の土台は、幼児期の言語環境で作られているようだ。
では、どうしたら良いのか。
ポイントは3つ。
第1は、幼子の話をじっくり聞いてあげること。
コツは、“うなずき”と“復唱”
「そう、○○したの。よく頑張ったわね」など “共感”しながら復唱するとよい。
第2は、時間や気持ちに余裕がないと、発する言葉が単語になりがち。
「早くね」「ちゃんと、ほら」・・
親のほうで、ゆっくり話すように心がけよう。
単語だけではなく、何がどうした、という主語+述語を使うようチョッピリ意識すること。
幼児は日々「学ぶ」=真似る。
そして、接続詞を少し、大袈裟に使うのもコツの一つ。
第3に、食事中は、貴重な会話タイム。
テレビをつけっぱなしの家庭は、先ずスイッチをオフすることから始める。
パパがルール違反しそうな家庭は、ママが下地を作ること。
学力の高い子の家庭は、会話量が多い。
言うまでもないことだが、怒鳴って躾(しつけ)をしたり、叱ってばかりいる親子関係では、この能力は伸びない。
ケジメは必要だが萎縮させては好奇心の芽を潰す。
年末年始は、日頃忙しい親御さんも“心の切り替え”ができるだろう。
ご家庭のゆったりとした雰囲気の中で、我が子と、言葉のキャッチボールを味わうのも一興。
非日常の刺激がいっぱいあるこの時期、幼児にとっては、散歩するだけでも楽しい体験となる。
(「どんちゃか」「理英会」代表・米田 正人)