時代の流れと親の役割
神奈川新聞2011年8月29日 朝刊掲載
2011年の7月4日、韓国政府が、小・中・高の既存教科書を電子書籍化する、と世界の報道陣に発表。
「電子化?デジタル化?? ふ〜ん、それが何なの?」と思われる中高年の方も多いだろう。
「紙の教科書が電子書籍に?・・エコにいいね」「重いカバンが軽くなる??」
誤解を恐れず、大胆に予想すれば、教科書デジタル化の真髄(しんずい)は、「教える―教えられる」教師と生徒の関係性を変質(へんしつ)させることになる。
知識を持っていた権威者(教師)が、その知識を切り売りして供給して成立していた授業の質が変わる。
なぜなら、デジタル化は即時に知識のネットワーク化を可能にするからだ。特に社会科や理科など知識重視の科目で顕著(けんちょ)になる。
たとえば、「世界遺産」に興味があれば、ネット環境が整っていれば、一瞬で映像を見ることができる。
あの不思議で美しいボリビアのウユニ塩湖が、どのようにできたかも知る事ができる。
地理と歴史との関係も教師に尋ねる必要はない。
生物の生態もしかりだ。
知りたいとき、観たい時、つまり好奇心が刺激されたら確認できる。
凄い時代になった。
ICT(Information and Communication Technology)は、閉塞感(へいそくかん)のある集団学習形態の「学校」を、根本的に変革させる。
楽しくかつ確実な学力を身につかせる可能性がある。
公表後の3年後、2014年から隣国では、国家レベルで実行し始めた。
さて、日本はどうだろう。
2015年になり文部科学省が動き出した。
「学力低下」という深刻かつ重大な問題以外にも、「いじめ・不登校」「学級崩壊」「小学校英語」「親対応」など“頼み”の現場の先生方は青息吐息。
かつ「35人学級」「教員の免許制度」など予算に絡む問題もあり、一筋縄では解決しそうにない。
税金を年間十数兆円使って義務教育が行われている以上、その成果=学力向上は求められるのは当然だ。
毎年5月に東京ビックサイトにて「教育ソリューション」という大展示会や講演会がある。
教育業界の動向を探るために、ここ数年注視し続けている。
文科省の動きと大手企業(教育関連メーカー)の動きは連動している。
2015年は、どのブースも怒(ど)涛(とう)のごとくタブレット一色だ。
義務教育の中にタブレットが導入されるのは時間の問題だ。
教育問題は、イデオロギーが絡らんだり、各々の経験則が議論の出発点になりがち。
よって、かみ合わない。
ではどうしたらいいのか。
学力の課題はさておき、教育力の基本のキは、幼児期における家庭内の躾(しつけ)。
親御さんは、自分たちの子を“一人前(いちにんまえ)”の人間にしなければならない。
これが親としてのゴール。
集団教育の場としての幼稚園・保育園を活用しながら、先ずは“コミュニケーションできる子ども”“自分のことは自分でやる子”に育てること。
スタートは挨拶と返事から。教育機関を批判する前に、我が子の“一人前度”を鍛えること。
親の義務を果たして教育機関に送り込みましょう。
「可愛くば、2つ叱って3つ褒め、5つ教えて善き人にせよ」(二宮尊徳)
一生懸命やる、勇気を持つ、卑怯なことはしない、礼儀正しく、ルールを守る・・・
幼児期に親が教えることはある。
頑張ったら褒めてやること。
約束を守らなかったら叱ること。
2・3・5のバランス感覚を持った親は子育てが上手い。
(「どんちゃか」「理英会」代表・米田 正人)