【親としての教育感覚を磨く】
神奈川新聞2013年2月18日 朝刊掲載
身体の成長は、目に見える。しかし、心や頭の中はダイレクトには見えない。文科省が標榜している“生きる力”もである。
小さいもの・弱いものを思いやる心、生き物を大切にする心、強くなろうとする心、ユーモアがわかる心、感動する心、など、“豊かな心”を願わない親はいない。しかし、育むための具体的な方法論は、議論(ぎろん)百出(ひゃくしゅつ)、百家争鳴(ひゃっかそうめい)。
才能教育、能力開発、など知能を高める教育も千差万別。何を選んでよいのか迷う。
親自身の自分の感覚を磨くしかない。
子どもの心を豊かに育てる時期は、赤ちゃんから9歳ぐらいまでと、言われている。が、定かではない。学び方によっては一生成長する。ただ、
幼児期は、思考や認識を司る母国語を身につける大切な時期だ。よって、先ずは日本語をしっかり学ばせるという方針を立てたい。と、いってもどうやって?と悩む親もいるだろう。それを助けてくれる材料・教具の一つが「絵本」であり、「読み聞かせ」だ。
4歳〜5歳で、文字に興味を持ち、ひらがな・カタカナを読める幼児もいる。ただ、文字を読んで内容を理解するということは、幼児には難しい。重要なのは、子供自身が自力で絵本を読めるようになることではなく、「音声」を通じて、想像力を豊かにする経験を積ませることで、生きた言葉を獲得することだ。
子どもは、読み手の「音声」と、絵本に描かれている「絵」をもとに内容を理解する。内容が深くなれば、読み手の表情を通じて、言葉を理解しようとする。
「読み聞かせ」はできれば毎日。母親ができない時は、父親の出番だ。休日に図書館にいき、1週間分借りてくれば、費用はゼロ。
しかも子供は、図書館に行く、絵本や紙芝居を選ぶ、夜まで待つ、という楽しみが倍増する。留意点は、
①楽しい雰囲気作り
②子どもの反応をみながら
の2点。
親が楽しそうにすれば、だいたい子供も楽しむ。絵本を読む行為は、読み手と聞き手のコミュニケーション。よって、雰囲気づくりは大事だ。絵本には、正しい読み方や決められた読み方はない。「読み聞かせ」を会話のごとくすればよい。会話は、普通相手の反応を見ながらするものだ。
「パパ、絵本を読んで!」という期間は短い。
さらに、親が絵本や紙芝居を読むことで、親の中に封印されていた“豊かな心”を取り戻すことができる。親自身が好きな絵本や紙芝居を持つと良い。