七月のこの時期、小学校受験の
世界では面接練習が始まり、秋本
番に向けた緊張感が高まります。
一人っ子が増えている昨今、お
子さんの小学校受験は親御さんに
とっても「初めての経験」である場
合が多く、不慣れな毎日と格闘さ
れています。そんなご家庭、お母
さん達にとって「合格体験談」は
とても参考になる情報の一つです。
幼児教室の現場だけでなく、今で
はインターネットで「小学校受験」
「合格体験」と検索するだけで二
百件以上のサイトがヒットします。
有用な情報が簡単に手に入る便利
な時代になっています。
しかし最近、私が勤務する教室
で、一人のお母さんからこのよう
な声を聞きました。「先生、私、
体験談を見たくないんです」。そ
の理由はこうでした。「だって、
見てると落ち込んじゃうんです」。
そのお母さん曰く、体験談には具
体的な話も多く、参考になること
が多い。でも例えば■週単位で小
さな目標を設定し、それを確実に
クリアしていった■家庭では復習
に徹した■受験方針について夫婦
で夜遅くまで話しあった
…というような具体的な事例を
見れば見るほど、自分自身の現況
と比べ「私はできていない!!」と
自分を責めてしまう(ことがある)
というのです。本来貴重な情報の
宝庫である体験談が、「できてな
いことリスト」に変化するのです。
長い受験生活の間にはこのような
心理状態に陥るお母さんは他にも
いらっしゃるかもしれません。そん
なときには一旦、情報から離れて
みましょう。体験談はあくまでも
その人の経験の一例に過ぎず、自
分がまったく同じようにする必要
はない、と考える。何事も盲信は
禁物。パソコン画面に食い入るよ
うな姿勢をやめ、「うちはうち」と
実際に口に出してみることも、時
には必要かもしれません。
神奈川新聞 連載コラム