川崎郊外に建つ、近年志願者が急増しているという噂の私立小学校を訪問する機会を得た。この小学校の入試問題では、特徴的な出題がある。「この公園の絵でいけないことをしている子はどの子ですか。○をつけましょう」といった問題である。年度によって「公園」が道路や教室、その他公共の場に変わることはあるが、いずれにしてもマナーやルールといった道徳心を問うものであることは変わりない。
在校の父母数名に、この学校のよさを聞くことができた。「徹底した縦割り活動がありがたい。」「素敵なおねえさんとの出会いで自分もそうなりたいと思ってほしい。」「その学年に合った宿題が出る。親にも答え合わせなどで手間がかかる一方で、何につまづいているのかがわかる。低学年の間は机に向かい勉強する習慣づけにもなる。そして、高学年になるにしたがい、中学入試を考えて宿題の量が減っていく」など。
訪問日。校長に「貴校の特徴を単刀直入に教えてください」と切り出すと、「全員が中学受験にチャレンジする学校。それだけの学力、実力を期待されているし、われわれも常に念頭に置いている。」と明快な回答。それに続けて「縦割り活動」「実物授業」「オーケストラ」「道徳教育」などの話題に移る。進学・学習指導が話題になることの多い学校だが、生活面、精神面の成長にも心を砕いているようだ。特に今年は「道徳教育」をテーマに、心の内面を大切にし、正解のない問題にも取り組ませているという。冒頭で紹介した道徳的な出題にも、実は校長自らが関わっているとのこと。
校長は続ける。「小さいときから親に『いけないこと』と『良いこと』をしっかりしつけられている子は場面場面でしっかり考え、自信を持って社会の中で生きていけます。また中学入試のときでも自分の行動を自分で判断し、行動できる子どもは強いですよ。」
この学校の入試問題は分野も広く、前述のように校長も関わりつつ「入試チーム」としてみなで問題を考えるそうだ。特にプリント問題はよく練られていて、その分、難易度は高い。ただ、入試においてはプリント問題以上に当日の行動観察が重視されるようだ。受験生本人がどのように立ち居、振る舞うかが重要とのこと。だからなのか、入学した子どもたちは学ぶことにも積極的で、普段の生活、特に友達の中でも自信に満ちあふれ、明るく、はつらつとしているように感じられる。
神奈川新聞 連載コラム