神奈川新聞 連載コラム

50回 ザ・チャレンジ!(小学校受験編)なぜ英語で理科の授業?

  • 2016.11.21

 小学5年生の理科室での授業。教壇に白衣の先生。ガラス管にゴム栓を取りつけ、何か説明している。一見、普通の授業風景だが、他の小学校と違うのは説明がすべて英語だということだ。黒板には「rubber stopper(ゴム栓)」「glass pipe(ガラス管)」など、実験器具の英語名が書かれている。
 私国立中学への進学において神奈川県有数の実績を誇る精華小学校では、14年前から高学年の理科の一部でこのような授業を行っている。
 なぜ理科で英語を?という問いに対して、授業担当の岡田先生は「実験器具などの具体物がたくさんあることと、実験を成功させる目的があること、この二つが重要な点で、英語を使う実際的な状況を作り出せるからです。」と答えた。英語で説明を聞き、必要な実験道具を英語で要求するのだが、ここにちょっとした「しかけ」もある。「実はこの理科室には、壊れた温度計や火が着かないライターなども備品として保管されています。」と明かしてくれた。実験道具を各班に配る際、それらの「欠陥」備品もあえて渡す。これらを交換しないと実験は進まない。「先生、これは壊れています。交換してください。」ただし授業中の日本語は禁止されているので、ここに英語を使う必然性が生まれる。こうした実際的な状況を作り出し、乗り越える経験をさせることが有意義な学習となる、と岡田先生は言う。今年の夏に初めて開催した、福島県のブリティッシュヒルズでの一泊二日の研修でも、現地での生活・行動すべてを英語でこなすハードな2日間であり、困難な場面もあったが、これを見事に子どもたちは乗り切ったそうだ。
 同校は、小学校課程における英語も主要教科の1つととらえ、主要4教科ではなく、主要「5教科」という考え方を掲げている。英語を重視している姿勢の表れだ。ただしそこに併記されている一行の文も見逃せない。「他の教科をおろそかにしてはいけない。特に国語」
 ここに同校の英語教育に対する奥深さを感じた。(どんちゃか/理英会 中里 淳)