小学生の英検事情を表すデータがある。受検者全体に小学生が占める割合は1割前後。多くはない。ただ、受けた子の合格率は高い。中学生が約6割、高校生が約3割に対し、小学生は約7割だ。級別合格率では5級8割、4級6割、3級で約5割だそうだ。3級は中3レベル相当なのに小学生で5割の合格率は驚く。英検以外の英語力診断テストでも小学生の受験熱は高いという。
英語教育の効果測定に役立ち、英語学習への動機付けにもなるため、このようなテストを活用している私学は多い。鎌倉女子大初等部もその1つである。今年3月の時点で6年生の約半数が何らかの英検級を取得済。受検する児童も年々増えている。「英語教育の成果の1つとして英検合格を掲げているのは事実です」と英語科の髙津先生。「ただしそれは目的ではなく、あくまでもプロセスです」と続けた。一部の小学校では英検合格に特化した指導で高い合格率を誇る事例もある。ただ、同校のアプローチはそうした極端な例とは異なるという。聞く・話す・読む・書くの4技能を大切にした英語学習を目指し、その途中の通過地点に英検合格を置いている。
「本校の英検対策は『読むこと』から始まります。また、フォニックスも丁寧に学びます」と先生は続ける。現在、英検5級に合格するには長い文章を読む力や、フォニックスの発音学習はあまり必要ではないのに、敢えてそれを行う裏には、同校が英検合格「だけ」を目的とせず、広く英語を学ばせたいという思いがあるのだ。3年生と4年生の週一回の英語授業では必ず全員で英語の物語を音読する。希望者への追加指導にも熱心だ。4年生以上には年30回の放課後英語指導を実施。2015年度からは3年生にも拡大した。
「高学年での英語学習についての抵抗感が年々小さくなっている」と語るのは松本安博初等部長。「『過程として』ではありますが、卒業までに全員合格。4級3級もどんどん挑戦させたいですね。」という熱い思いも垣間見えた。
小学校受験の学校選びに英語教育を1つの判断基準とするのは間違いではないだろう。(どんちゃか/理英会 中里 淳)
神奈川新聞 連載コラム