神奈川新聞 連載コラム

75回 ザ・チャレンジ!(小学校編)子どものやる気を引き出すには?

  • 2019.9.10

東京学芸大学附属世田谷小学校 沼田晶弘 教諭
神奈川新聞2019年9月10日朝刊掲載

『家でできる「自信が持てる子」の育て方』などの著書やテレビ出演で評判のカリスマ小学校教師、沼田晶弘先生(東京学芸大学付属世田谷小学校)を取材した。

アメリカの大学院でコーチング論、モチベーションコントロールなど能力開発を専攻した沼田先生だが、「子どものやる気をすぐに引き出す特効薬はありません。
やる気はこつこつためていくもので、毎日の日課の工夫が大切」と語る。
例えば日々の教室掃除。自身が担当するクラスではこんな工夫をしている。
まず、当番制の廃止。児童それぞれが自分で考えて必要な行動を取る。
また掃除の合間には一旦手を休め、音楽を流してダンスタイムを取ることにした。
すると掃除の時間が待ち遠しくなった。やる気が出て、掃除時間も短縮したと言う。

一方で「長期的なモチベーション維持には、大きな目標を定め、そこに向かって小さな成功体験を積み重ねていくことが重要」とも語る。
以前担任した6年生のクラス目標は「卒業遠足に帝国ホテルでディナーを食べて、みんなでリムジンに乗って学校に帰ろう」という前代未聞の内容に決まった。
ただし、実現するには学級費だけでは足りない。
そこでクラスは団結し、コンテストで賞金を稼ぐことにした。
児童たちが選んできた、文具の新商品など40件ものコンテストに千点を超える作品を応募。
20万円以上の賞金を獲得し、目標の卒業遠足を実現させた。
児童たちにとっては大きな自信になったことだろう。

そんな沼田先生が子どもの褒め方を教えてくれた。褒め方には順序があり、いきなり褒めても、子どもの心には響かない。
褒め言葉をかける前段階で「見る、気づく、認める」の3つの行動をしっかりと行うことが重要だ。そうすると、褒めたとき、シンプルな言葉でも十分響くそうだ。
それらに加えて、親自身が「喜ぶ」ことが子どもたちのやる気につながるそうだ。
「頑張ったら、親が喜んでくれた。
これほど、子どもの心に強く残るものはない」と沼田先生は語る。
子どもたちの話をする先生の表情はとても嬉しそうだった。