教育評論家 尾木直樹 氏
神奈川新聞2019年10月22日朝刊掲載
「尾木ママ」の愛称で親しまれる教育評論家の尾木直樹氏を取材した。
尾木氏は、いじめ問題と長く向き合ってきた。大津市の中2自殺事件の第三者委員を務めた際の検証報告も書籍(岩波新書「いじめ問題をどう克服するか」)にまとめている。
取材したのは、児童養護施設の子どもたちへの学習支援活動や、悩みを抱える10代の子どもたちに相談支援を行う認定NPO法人「3keys」が主催するセミナーである。
登壇した尾木氏は、いじめ自殺を防ぐには、子どもの居場所づくりが重要だと述べ、学校だけが学びの場という時代ではなくなった今、居場所となるさまざまな学びの場の必要性を訴えた。
さらに氏は授業についていけない子どもやいじめを助長しているという理由から一斉に画一的な指導を受けるこれまでの学校の授業スタイルを疑問視するとともに、新たな教育スタイルとして、宿題やクラス担任、定期テストがいっさい存在しないユニークな学校を紹介した。
東京都の一部の公立中学で行われているもので子どもの自主性を重視し、その日に授業を受けるかどうかも自分で選択するしくみになっている。
その結果、不登校は解消していき、学力もアップしたという。
「この方式に賛同する学校がどんどん増えれば、日本の教育もがらりと変わりますよ。点が線になり、面になるのは時間の問題です。大きな変化が起こるでしょう」と尾木氏は語った。
また、著書で「叱らない子育て論」を唱える尾木氏に対し、会場からは「叱らないのは甘やかしにつながらないか。
どのように叱らずに育てれば良いのか」と質問があがった。尾木氏は次のように答えた。
「ものすごく簡単なこと。普段から子ども自身が自己決定する場面をつくること。それから他者との比較ではなく、今日の自分が1週間前の自分より、どれだけ成長しているかが大事なの」と独特の調子で子ども自身の決定を重視するようアドバイスした。
自主性を尊重することで、子どもたちの意欲は向上する。学びの質が問われる今、気づかされることが多かった。