神奈川新聞 連載コラム

77回 ザ・チャレンジ!(小学校編)平成の教育の鍵になる「個性の尊重は」?

  • 2019.11.19

小学校教員 教育専門誌「おそい・はやい・ひくい・たかい」編集者 岡崎勝 教諭
神奈川新聞 2019年11月19日 朝刊掲載

子育て支援講座「小学生から思春期 子どもに時間を返そう」が武蔵小杉駅に近い川崎市生涯学習プラザで10・11月に開催された。
講座を主催したのは認定NPO法人かわさき市民アカデミーだ。
このアカデミーでは生涯学習の場を提供する目的で年間約100講座を開催し、毎年のべ7000人ほどが様々な教養講座を受講している。

全6回の子育て支援講座では岸田雪子氏(元日本テレビ報道局解説委員、フリーキャスター)、宮台真司氏(首都大学東京教授)ら、毎回異なる専門家が講師を務め、多様な視点から小学生を取り巻く問題を語った。
この講座の第1回目を取材した。
講師は40年以上愛知県で小学校教員を務める岡崎勝氏だ。
岡崎氏は創刊から106号を数える教育専門誌「おそい・はやい・ひくい・たかい」の編集、執筆を1998年の刊行以来20年以上担当し、著書も多い。
この日の講座は専門誌でも特集した『「平成」の子育てはなぜ難しかったのか。』をもとに、子どもと先生の立場から平成の教育を振り返る試みだった。

平成の教育を考えるうえで鍵になるのが「個性の尊重」という教育理念だと岡崎氏は語る。
昭和から平成へ変わる頃、学校では学力重視から個性重視への転換が起こった。
この方向性は間違っていないとしつつも、一人ひとりの個性を大切にし、得意なことを伸ばそう、能力を開花させようというのでは「全員何かで100点を取れ」と言っているのと同じだと指摘する。
これでは個性までも他人と比較して優劣をつけ、評価を下していないだろうかと投げかけた。
クラス全員一人ひとりが得意なことを見つけようという授業を例にあげて、「こういう授業をプレッシャーに感じている子は少なくない。
学習の基本は個々人がそれぞれの課題に取り組むことだ」と岡崎氏は説く。
押しつけでなく、子どもの主体性を生かす教育こそが望ましいのだ。

このように、先生と子どもたちの本音を語っていく岡崎氏の話に受講者は深くうなずき、気づきをメモに記していた。