豊岡短期大学 清水友康 氏
神奈川新聞 2020年3月17日 朝刊掲載
絵を使い、情報を伝達する方法は言葉を使わないからこその利点があります。
その例として、非常口やトイレの入り口を人型マークなどで示す「ピクトグラム」が挙げられます。
ピクトグラムは1964年の東京オリンピックの際、日本のデザイナーによって開発されました。
海外からの訪問者にも開催種目の会場や公共施設の意味が一目でわかるように、指示案内をマークで示したのが始まりです。
このような情報を絵で伝える方法は、近年、保育園で積極的に取り入れられ、言葉の理解が発達途上にある小さな子どもたちの支えになっています。
「耳からの言葉で理解するより、目で見て理解する方が得意な子どもがいます。『ビジュアル・ラーナー』と呼びますが、彼らには、何かを伝えようとする際、言葉を投げかけるだけでなく、絵にして伝えてあげると非常に良いのです」
こう語るのは臨床心理士の清水友康氏。
豊岡短期大学で講師を務める傍ら、東京都や神奈川県が行う保育士研修事業で発達障がいの講座などを担当しています。
氏が巡回する保育園では、保育士が伝えたいことをイラストにした「絵カード」=写真を使い、園児とのコミュニケーションが円滑にできるよう工夫をしています。
絵カードは1日の予定や物の置き場所などを伝えるような場合、特に効果的です。
たとえば「トイレに行った後で手を洗いましょう」といった連続する行動を促す際、言葉の指示に加えて絵カードを示します。
こうすることで、子どもは相手の伝えたいことを視覚的に理解できて、安心感が高まり、園生活をより楽しめるのです。「ビジュアル・ラーナー」を言語の理解に課題がある子ではなく、「視覚理解に優れた子」ととらえることが大事なのでしょう。
「その子の特性を理解したうえで、得意なことや好きなことを伸ばそうという視点を、子どもと関わる全ての大人に持ってほしいです。そうすれば、どんな子でも前向きになり、自信を持つことができるのです」
清水氏はこのように訴えかけていました。