神奈川新聞 2021年7月5日 朝刊掲載
ことばの学校事務局 読むとくメソッド®開発主事 須藤孝行
【紙面本文】
幼児期の本や文字と付き合い方は?
文字と音とが一致するような工夫を
幼児期の絵本の読み聞かせは、本に慣れ親しむよいきっかけになると奨励されていますね。でも一つ注意すべきことがあります。
それは小学校入学後のギャップです。幼児期の読み聞かせでは保護者の読み上げる声を聞きながら、子どもの目は主に絵を追っています。
しかし小学生に入ると文字を自分で読み、内容理解することが求められます。
ここにギャップがあり、スムーズに読書に移行させるためには、実は幼児期から文字にも意識を向けさせることが重要なのです。読み聞かせの最中に文字を指さしてみたり、ときには読み聞かせとは別の場で五十音の一文字一文字について、目で確かめ声に出したりすることが有効です。
小学校に入ると、正しい筆順で丁寧に文字を書くことから国語の学習はスタートします。
その後、物語文を読んでいくわけですが、文字が読めて書ければ、すぐに本が読めるかというと、そう簡単にはいきません。
この頃の子どもたちは、まだ「文字読み」と呼ばれる初期段階の読み方をしています。
文字読みとは、例えば「むかし」という言葉を「む」と「か」と「し」という三文字ばらばらに読むことを言います。
文字を覚えたばかりの子どもは、まだ一文字ずつを読んでいくので精一杯。
語の意味を瞬時に捉えることが難しいのです。
そこで、読み聞かせ時の工夫の提案です。
一方的に保護者が読んでいくのではなく、一文ごと、文節ごとに保護者が読み、それを子どもに真似させるのです。
慣れてきたら一文節を保護者が読み、その次の文節を子どもに読ませる、というようにレベルを上げるのもよいでしょう。
ところで幼児や小学校低学年の子への本選びをするときに注目すべき点が一つあります。
それは「分かち書き」で書かれているかどうか。
文節ごとのかたまりに分けて書かれていれば、字を覚えたばかりの子どもでも意味を捉えやすいからです。
このような読書経験を重ねてお子さまの読み方がスムーズになり、入学後の国語力の伸びにつながっていくのです。