理究の哲学(エンジン)

第一章 幸福ノ学

第八項 幸福な家庭をつくる七原則

家族を作るのは大変だけど、
その分、めったになくならないからさ、
あんたが努力しなくたって、
そう簡単に切れたりしないじゃん。
だから、安心して甘えたらいいと思う。
だけど、大事だってことは
知っておかないとやばいと思う。

― 『幸福な食卓』瀬尾まいこ ―


私と同世代、とりわけ田舎から都会に出てきた若者は、貧乏学生が多く、みな質素な生活を送っていました。当時の国公立大学の授業料は3,000円(年間36,000円)。家庭教師のアルバイト代が週1回2時間で、月額16,000円~20,000円程度もあり、大いに助かりました。よって、工夫次第で親からの仕送り(援助)は必要なく、自立して生活する習性が自然と身についた時代です。つまり、質素倹約が金科玉条となっていました(まるで江戸時代?)
私の場合、20代後半まで「6畳1間風呂なし、トイレ共同」のアパート。今から考えると「寝るだけの場所にお金をかけない金銭感覚があった」とも言えるし、「同級生が皆似たような環境にいたので、その生活環境が普通」に思えたとも、「ただただ、金がなかった」とも言えます。自由を満喫していました。生活水準に対する期待値が低い分、満足度が高かったとも言えます。
独身時代は、テレビ・ラジオ・CD類は買わず(携帯などはない時代)、世間からは隔離していたように思います。
漠然と、「大事なものは、金・モノじゃないなぁ」と。
大学時代の棲家には「克己」と書いてすごしていました。
(う~ん、堅物だった。大なり小なり青年とはそんなものなのかな!)
「自分とは何か?」
「自己意識は一体いつごろ、そのようにつくられるのか?」
「相手の気持ちがわかる心 = 心の理論とは、どうつくられる?」
自分自身や人間のことを知りたくて心理学を専攻しました。
多くの青年と同じように、悩み多き青春時代でした。
人生に悲観的になったり、楽観的になったりしていました。

本格的に勉強し始めたのは、大学を卒業してからです。子どもたちと実際に生活し、指導していく中で必要に迫られました。
純粋に「勉強しなければ、責任ある仕事ができないなぁ」というものです。
今考えると、多くの友人と違う点は、両親や家族や家族から口うるさく「こうしろ、ああしろ」といわれない環境が、自分には与えられていたことかもしれません。
それは、信州の田舎から大学のある都会に住んだことや、自分自身が4人兄弟の4番目で、小さい頃から比較的干渉されず、自由に生きてこられたからかもしれません。
まぁ、あくまでも類推であり、後付です。が、運が良かったと感じています。
人生の節目の多くの選択は、自分で決めてきました。
我々の世代(1950年代生まれ)の多くは、そうすることが当たり前だったように思えます。
よって、経験不足を補うためには、勉強するしかないのです。
大学院で学んだのもその1つ。加えて、自分を支えてくれたのが書物でした。

下記に紹介する「幸福な家庭をつくる七原則」は、デール・カーネギーの名著『人を動かす』の最終章に掲載されているもの。国民性や時代も違いますが、多くの人に読まれている何かがあるのだと感じています。

結婚を決意した若者に捧げたいと思います。では、ここも声に出して読んでみましょう。

原則1 口やかましくいわない
原則2 長所を認める
原則3 あら探しをしない
原則4 ほめる
原則5 ささやかな心づくしを怠らない
原則6 礼儀を守る
原則7 正しい性の知識を持つ

既婚の方々は、1~7まで、1つ1つ反省も込めてチェックしてみましょう。できれば、パートナーと一緒に、互いにどうなのかを確認しながらやるといいでしょう。
結婚も成功する人、失敗する人様々です。
何が成功で、何が失敗かは議論が分かれます。
赤の他人が恋愛したり、見合いしたり、何かの縁で同じ屋根の下で暮らし続ける、よくよく考えると凄いことです。しかも一夫一婦制という縛りがあるので、よほど工夫や妥協、相互理解に努めなければ困難でしょう。
日本でも離婚率は24%。結婚した4組に1組は離婚というデータがあります。
できれば・・・・・・・・失敗しない結婚生活を望みますが、こればっかりは男と女の問題。一寸先は闇と考えたほうがいいでしょう。
よって、失敗したらやり直せるだけの知恵とタフさを持ちたいものです。
いやその前に、失敗しないための”感情をコントロールする知性”を是非磨いて欲しいと思います。
さて、アメリカでの結婚の失敗の原因は、大きいものから順に下記の4つだそうです。

1. 性生活の不調和
2. 経済的な困難
3. 余暇利用法についての意見の不一致
4. 心身の異常

日本ではどうでしょうか。本音を言わない国民性ゆえ察するしかありません。
セックス、職業、趣味、健康の4点は要チェックということです。
実は、この4点はとてもデリケートな項目ばかりですが、話さなければ理解しあえないものです。当たり前のことですが、肝心なのはコミュニケーションをとること。そして、カーネギーの7原則を参考に、少しだけ努力することです。

付け加えて、最新の心理学の研究から1つだけ紹介しましょう。
結婚・恋愛心理学で著名なジョン・ゴットマンは、『結婚がうまくいく7つの原則」の中で、ネガ感情にも生産的なものと破壊的なものがあると指摘しました。
適切なネガ感情は、例えば、近親者の死や不幸に対する嘆き・悲しみ・同情は、人間として自然の感情です。また、不正や悪行に対する怒りは、戦うエネルギーの源になります。これらは、生産的なネガ感情です。
生産的なネガ感情は、生き延びるための環境の変化を察知し、闘争あるいは逃走のための準備をさせるシグナルにもなります。
破壊的ネガ感情は、軽蔑、無反応、人格批判、拒否的態度の4点だそうです。夫婦間で、破壊的なネガ感情が芽生えてきたら要注意。そんな時は、一人旅で頭を冷やすこともいいでしょう。”破壊”を抑制することは、精神的肉体的努力が伴います。これは夫婦に限ったことではありません。職場でも家庭でも同じです。一時の感情の奴隷になったら、あなたは負けます。そうならないように、”技””知恵”を持ちましょう。
勉強することです。

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