さぁ、どうだったでしょうか?
知らなくて当然の問題もあります。これは知っておいて欲しい、もし勘違いしているのであれば訂正して欲しい問題もあります。
それでは、解説していきましょう。
問1 私たちは脳をどれだけ使っていますか?
多くの人が、3. およそ10% を選択します。
脳の話題になると、必ず引用されるのがこの「10%神話」です。”自分の脳みその10%しか使っていないのだから、もっとできるはずだ”というポジティブ思考につながりますが、残念ながら全く根拠がありまあせん。 実は、人間の脳はかなり効率的な装置で、無駄がないとされています。もし10%が正しいとするならば、脳が多少傷ついても、目立った問題は起きない可能性が高いはずです。ところが、脳は少しの傷でも重大なトラブルを引き起こします。
実は、この「10%神話」の由来が面白いのです。
近代心理学者のウィリアム・ジェームス(アメリカ)が、『たいていの人は、自分の知的潜在能力(精神的な能力)の約10%以上を使っていないのではないか』と語ったものが、啓蒙家らによって「能力の10%」になり、「脳の10%」と拡大利用されたのでは・・・という説です。
正解は およそ100%
問2 最後に脳細胞が生まれるのはいつ?
2. 5歳~6歳 と選択する人が多いかもしれません。
サンディアゴ・ラーマン・イ・カハール博士によって脳神経細胞(ニューロン)が発見されました。1906年にカハール博士はノーベル賞を受賞しています。
1990年代まで、人間の脳は大人になってしまえば、衰えるだけで成長することはない、というのが常識でした。
『1日に10万個の脳神経細胞が死んでいく』
『何でも若いときにやっておけよ。大人になったら脳は衰えるばかりだから』
皆さんも、親や先生から言われたことがありませんか?
大人の脳では、新しく神経細胞が生まれることはないという通説でした。
1998年、スウェーデンのピーター・エリクソンにより、神経新生が成人の脳の海馬(記憶の中枢の大脳辺縁系にある)で起こっている画期的な研究結果の発表がありました。
2000年には、ロンドンの研究グループによって、ロンドンのタクシードライバーの脳の海馬が、一般市民の脳の海馬と異なる研究結果を発表しました。
人間の脳は、経験によって大きく変わることが証明されています。幼少期だけでなく、成長期の脳も、成熟した脳でも神経細胞が生まれ続け、神経回路が変化することの証明は、我々に勇気を与えてくれます。
かといって、”3つ子の魂百まで”といった経験上の教えや知恵が消滅したことにはなりません。
”鉄は熱いうちに打て”は、特に芸能やスポーツ、囲碁・将棋の世界では共通した認識のようです。
一方”五十の手習い””六十の手習い”は、学問や習い事をするのに、年齢制限などはなく、たとえ晩年になって始めても遅くはない、という前向きな意味を、脳科学のデータは後押ししてくれます。
正解は 老年期
問3 生後1ヶ月未満の赤ちゃん(健常児)の脳はおよそどのくらいの重さ?
これは、”脳の知識”というより、人間がおよそどのくらいの重さで誕生するのかという常識の有無。
赤ちゃんを抱いた経験があるかどうか、さらに10グラム、50グラム、100グラムの感覚があるかどうか、という問題です。
人間の赤ちゃんはおよそ2kg~3kgで生まれます。個人差はありますね。
生卵1個の重さは、およそ40g~60g程度でしょうか。赤ちゃんの脳の重さが生卵1個分?・・・チョイと考えづらい。まぁ、感覚的な問題ですが。
よって、消去法でも正解にたどり着きます。
ところで、あなたは何グラムの体重で生まれましたか?
正解は 350~400グラム
問4 アインシュタインの脳を普通の人と比べたら?
相対性理論のアインシュタインは、天才の代表格として誰からも知られています。チャーミングな写真が、彼を一層人気者にしているのでしょう。名前は知っていても、ほとんどの人は「相対性理論」を説明できません。私も同じようなものです。
天才 = 脳が大きい
天才 = 脳の中のしわが多い
そんな俗説に紛らわされている人もいるかもしれませんね。
昔の話ですが、皺くちゃなおばあさん(長寿で有名になった双子きんさん、ぎんさんのような)が信州の田舎の近所にいました。
『あ~いう、シワがたくさんある人は頭がいいんだよ』誰ともなく噂していたのを記憶しています。
脳のシワと顔のシワ、人間って勝手に物語を作るのでしょうね。ちなみに脳のシワが多いのは、鯨とイルカ。一番少ないのはトガリネズミ。
脳の大きさは、ほぼ体の大きさによります。
正解は 同じ大きさだった
問5 右脳型人間と左脳型人間は存在する
この問題は、かなり間違えた人が多いかもしれません。
冷徹で厳格な”左脳”は、「論理的」「分析的」「言語的」「男性的」。
温かくファジーは”右脳”は、「直感的」「全体的」「非言語的」「女性的」。
血液型判断法や星座占いのごとき魅力的な表現です。ばっさりと、説明できるフレームワークは使い勝手がいいので、都合がいいのです。
「キミは右脳的だねぇ~、ほら、感が鋭いでしょ」
酒宴の場では盛り上がりそうな話題です。私たちも20代の頃は盛んに使っていました。いわばブームでした。
脳の機能を左右にん二分した手法は、米国で1970年代~1990年代に流行しました。そして先進国に伝播していきました。日本も例外ではありません。
きっかけは、アメリカの神経心理学者、ロジャー・スペリーの、左右の脳の離断手術による”脳機能の左右差”の発見 ― 「分離脳研究」です。
彼は、この功績により1981年にノーベル賞を受賞しました。そして世間では、左脳、右脳活性化フィーバーが起こりました。
しかし、現在では画像検査の進歩で、脳の領域別機能研究が容易になり、二分法で語れるほど単純でないことが判明してきました。
健常な脳は、最初に入った情報を、左右間の連絡経路を使って、相互補完し合い、情報共有します。
正解は 存在しない
次問、問6~8は重要な問いではないので、関心のある人だけ解説を読んでください。
ここに書いてある数値を覚える必要は全くありません。なぜなら、脳科学はまだまだ発展途上の学問であり、今後も数字が変わる可能性が大きいのです。
問6 ニューロン(神経細胞)は脳の中にいくつある?
実は、脳の体積とニューロンの大きさを比較計算(単純計算)して、1000億とか2000億とか言われています。
この10年で脳科学におけるプロジェクトが進行して、大脳皮質の回路構造が判明したり、電子顕微鏡で脳の隅々まで精査する試みがされているようなので、この数字は変わるでしょう。
正解は 800億~2000億
問7 人の遺伝子の数はいくつある?
遺伝子の数は2003年のヒトゲノム・プロジェクトが完了し、判明しました。ヒトの遺伝子は約2万程度です。
これは、今まで専門家が予想していた以上に少ない数だと言われています。何とネズミやサルとほぼ同じと聞くと、感覚的にはびっくりします。
正解は 2万
ところで、遺伝子とかDNAとかニューロンとか・・・専門用語でわかりづらいですね。ここでは詳細説明は省きますが、簡単に触れましょう。
簡単に言うと(ものの本からの借用ですが)遺伝子は情報であり、DNAはそれを記録する媒体。例えで言うと、音楽が遺伝子、その音楽を記録している媒体(CD)をDNA。
ヒトのDNAは全部で30億塩基対あり、ほぼ解読されました。DNAは、A(アデニン)、T(チミン)、C(シトシン)、G(グアニン)の4種類。この並び順によって遺伝情報を記録しています。
4は、2の2乗2ビット。1ビットは8バイト。バイト数で表現すると、30億×2÷8=7.5億バイト = 750メガバイト つまり、CD1枚の容量に収まる情報量ということになります。
問8 大人の脳の重さは、およそ体重の何%?
この問題も、重さの類推で正解にたどり着けそうです。
仮に体重が60kgとしましょう。平均しておよそ6頭身だと考えれば、首以上の重さは16%(10kg)。身体は左右の肉体があるので、まぁ、その半分の8%(5kg)髪に覆われている箇所は、およそ4分の1程度ですから、だいたい2%(1.25kg)。
正解は 2. 1%~3%