第三章 脳と心ノ学
第四項 あなたも「ジキルとハイド」?
自分を知ることは、自己コントロールへの第一歩。自己コントロールを強化することで「意志力」が高まる。出世も勉強も寿命も「意志力」が決め、その「意志力」は脳が決める。
私たちの脳は1つしかないが、心は2つある、あるいは2つの自己が存在する。つまり、一方の自己が衝動のまま行動して目先の欲求を満たそうとする。
一方の自己は衝動を抑えて欲求の充足を先に延し、長期的な目標に従って行動する。そのどちらも自分であり、私たちは2つの自己の間を行ったり来たりする。やせたいと願う自分になるかと思えば、クッキーが食べたくてたまらない自分になる。
― 「スタンフォードの自分を変える教室」ケリー・マクゴニガル ―
“人間は、本当はひとつの存在ではなく、二つである”1885年「ジキル博士とハイド氏」で一世を風靡したロバート・ルイス・スティーブンスの言葉です。もう百年以上昔の作品です。少し紹介しましょう。
温厚な科学者ジキル博士に象徴される伝統的な礼儀と、残忍なハイド氏に具現化された抑えがたい情熱。この相反する二面性とその展開の起伏に面白さがあります。
薬によって真っ当なジキル博士が、ハイド氏に蛮行をさせます。このことは、ジキル博士の“心の願望”を薬の副作用で肥大化・変質化させたとも捉えられるし、また、どんな高名な人格者でも、人間には表に出せない“深い闇”を持っているとも理解できます。
次章で触れる「ジョハリの窓」も同じような考え方です。人間は“光の面”と“暗黒の面”を併せ持つ ―矛盾した両面を持っている― 生物なのだという事を描いた作品ともいえます。
現代では、人間の二面性や複雑さは常識になっているので、驚きは少ないかもしれません。ただ、この作品は、精神科医のジムグント・フロイトが「無意識」を発見する(1900年頃)以前の作品という点でも評価されています。
さて、あなたは自分のことを、“冷静で合理的な判断できる”人間だと考えていますか。もしそうであるならば、“ジキル博士状態”といっていいでしょう。
たとえば、“性に対しての自制(我慢する、相手に明確にノーという)”機能は、通常働きます、と断言できますか。
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