理究の哲学(エンジン)

第三章 脳と心ノ学

第四項 あなたも「ジキルとハイド」?

― やっかいな性的興奮 ―

常に、性感染症や望まない妊娠を充分避けられると信じていますか。
多くの皆さんは、「当然です」「変なことするわけない」と答えるかもしれません。しかし、感情の高ぶりは ―激情の最中では“ノー”が“イエス”に変わる― リスクを高めることを多くの人は経験しています。特に男性に顕著ですが、女性にも当然あります。
「いや、私はいたって健全な人間であり、そんなことはない!」 と、言い切る人もいるでしょう。ただ、残念ながら数々の研究データでは、人間は、自分の感情をコントロールできないことを証明しています。
性的興奮という感情は、ジキル博士をハイド氏に変貌させるのです。

たとえば、10代から20代の性的犯罪は、何を物語っているでしょう。
警視庁のデータ(平成26年度)によると、日本での強姦約1,400件、強制わいせつ約7,500件。これは警察に被害届のあった件数です。性暴力に遭い、被害を届け出る女性は、わずか13%というデータ(法務総合研究所)があります。被害にあっても届け出ない人が77%もいるのも驚きです。日本の犯罪発生が低いというデータは、100%信用できないかもしれません。
さて、このデータを当てはめると、強姦は、約10,700件、強制わいせつは、約57,700件になります。では加害者は、どんな人物像なのかというと、これがごくごく普通の有職者(職を持っている)が70%を占めています。

これは何を意味するのでしょうか?
犯罪者の汚名、解雇・離職のリスクを冒してまでも、犯罪に向かうエネルギーを抑制できずに、欲望に振り回され、奈落の底に落ちてしまう現実があります。
話は飛躍しますが、この“やっかいな性”課題を、政治問題に敷衍させます。あの「慰安婦問題」です。
日韓間の友好に水を差し、国際的にも論争になっている「慰安婦問題」も戦争という極限状態のことを考えれば、政府主導で行われた可能性は高い、と考えるのが合理的な思考です。
それを「誇りある日本人」「美しい日本」という耳障りのよい標語を並べ立て、「過去の負の遺産」を頑なに否定し、隠そうとしている外務省や安部政権に見識の浅さが見え隠れします。
戦争状態の中、軍隊で性病が蔓延すれば、士気はさがり、致命傷になるおそれがでます。“性の管理”は、国策として重要課題の1つになっていたことは簡単に想像がつきます。人間を知れば知るほど、人間の営み、自然発生的な行為は白日に晒されます。ドイツ・フランス・イタリアなども国家主導で管理してきた事実が存在します。

「ジキル博士とハイド氏」を著したスティーブンスと同じように、「脳は1つだが心は2つある」、あるいは「心の中に、2つの自己が存在する」は、研究者の世界で常識になりつつあります。
つまり、一方の自己が衝動のまま目先の欲求を満たそうとし、もう一方の自己は衝動を抑えて欲求の充足を先延ばしにして、長期的な目標に従って行動をするのです。そのどちらも自分なのです。
私たちは、その2つの自己を行ったり来たりしているのです。

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