NO7-3 鉄則3 【学び手】は、常に正しい
~他者原因論の罠(わな)に気をつけろ~
教えようとしていることがうまく教えられないとき、教え手は「個人攻撃(他者原因論)の罠」に陥りがちになります。「人のせいにする」ってことです。私も含め、多くの人が経験していることではないでしょうか。
指導者⇒生徒に『昨日の授業でやったじゃないか!何で出来ないのだ!』
第三者の声⇒(あれ?教え方が悪いうえに、演習時間とってないぞ・・・)
上司⇒部下に『前回の打ち合わせで確認したはずですね!』
第三者の声⇒(え~そうっだけ?議事録にも載ってないし、それほど大事なら昨日一言かけてくれればいいじゃん。あんな言い方することないよなぁ・・・)
「個人攻撃(他者原因論)の罠」は、上記のように新たな個人攻撃を生みます。そしてその罠は、我々の周りにゴロゴロしているのです。
宿題をやってこない生徒に
→“やる気がなさすぎる生徒には教えられないよな”
同じ事を何度も繰返し説明してもわからない
→“この生徒は能力的に無理があるんじゃないの”
なかなか伸びない幼児に
→“あの親だからね。伸びないのも仕方がないわよ”
こんな会話がスタッフルームから聞こえてくるようではお先真っ暗。
先ず、【学び手】は、常に正しい という鉄則を自分のものにしましょう。
宿題をやってこないことが「正しい」という意味ではありません。宿題をやってこない背景にはそれなりの理由があります。その生徒は、その「正しい」理由(難しすぎる、時間がなかった、体調が悪かった)にそってやってこなかったのです。
「宿題をやらせること」これ1つとっても、手順があるはずです。方法があるはずです。
【学び手】が常に正しいからといって、言いなりになれといっているわけではありません。「正しく」を是認した上で、「目的」を達成できるために創意工夫をすることです。
たとえば、中学受験6年生のスパートゼミ特訓や中学3年生の実践特訓など、5時間以上連続の特訓には悲鳴がでます。「つらい・キツイ」という感情は正直であり、自然です。この感情に対して、「それでは3時間に変更します」と言いますか?言いませんね。必要があったから、目的があるから5時間のカリキュラムを組んだはずです。
「つらい・キツイ」の正しい感情に対して、方策を練ることが必要なのです。「つらい・キツイ」5時間をどうにかして集中させる。達成感を持たせる。グングンのめりこませる。笑わせる。それはつらい中でこそ際立った「清涼剤」として光るのです。「つらい・キツイ」を否定してはならないのです。むしろこれを見切って肯定した上でその脱却を図る。それがプロの腕前です。そのことに喜びを感じているあなたは、幸福ものです(笑)
私たちの仕事は、現在0歳~18歳までの乳幼児から青年まで幅広い層を対象にしています。保育・幼児・小・中・高とそれぞれの部門で専門性を敷いています。よって、通常スタッフが困ることはありません。ただ、人事異動で、学習塾部門から幼児部門や保育部門などの現場職(教育職)間異動、現場職(教育職)から、開発・制作部門やバックオフィス部門への異動になった時は、少し戸惑うこともあるでしょう。でも、心配いりません。先輩達は大いに活躍しています。むしろ、新しい世界を経験することで、新鮮な気持ちが再沸し、新たな発見をするチャンスが得られます。
次に、学習塾事業部から幼児教育部門(理究エデュオ)に異動したスタッフのコラムを紹介します。
学び手を知る、学び手にコミットする、・・そして学び手との信頼関係を構築した“ほんわか”する、しかも貴重な教訓を与えてくれるエピソードです。
「子どもを『変える』ということ」
2019.12 理究エデュオ 運営要項 巻頭言 仁尾 和道
二子玉川校に赴任し、教室長を始めたのが数年前。同時に太田ジャングル先生が神奈川から異動していらっしゃいました。太田先生が公開授業(今で言う体験会)の折、約60分という時間の中で何度も何度も口から子どもに向けて発されていたのが「変わったねぇ!!」というシャウトでした。
「お母さん、見てるよ~、変わった〇〇を見てるよ!!」
「先週の〇〇はこんなだった。でも今週の〇〇はこんなにできるようになった!!見てください!お父さん!この変わった〇〇を!!」
それ以来自分にもこの子どもが「変わる」ということが授業を行う上での一つのチェックポイントになってしまいました。
確かにお金を払ってせっかく自分の授業を選んできてくれるんだから、何か一つでも身になるモノを持って返ってもらいたい、そんな思いからでした。
今でも授業のたびに、この子には何をしたら良くなってくれるだろうか、どんな言葉がけをしたら変わってくれるだろうか、を常に念頭に置いています。
仁尾が年中から年長への成長に触れる中で、一つ気づいたことがあります。
年中時に体験会に来て二子玉川校の扉にかじりついて教室に入らなかったM上くん。1年半後に暁星合格。同じく、同時期に体験時に終始母から離れず後ろの方で母と一緒に泣きながらプリントをやっていたO原くん。同じく1年半後に暁星合格。新年長時に体験授業内体験で入会したO倉くん。発表ができずに前で泣いていたのに暁星合格。子どもの成長の速さには眼を見張るものがあります。特に年長時の一年間は黄金の一年間です。
こういった経験から、年少・年中時に如何に破天荒でも、如何に極度の引っ込み思案であろうと仁尾は動じなくなりました。(自分も成長(笑))親に対するアプローチでもアドバイスができるようになりました。子どもを過小評価する傾向が強い親は少なくありません。
「こんなんじゃ受験なんてできませんよね。」「うちの子が迷惑ばかりかけて恥ずかしいです。」よく聞くセリフですが、そんな事はありませんよ、お母さん。子どもは大人がびっくりするほど成長します。特に年長の1年間で親の目にもわかるくらいの変貌を遂げますよ。そのお手伝いをさせてください、と。
仁尾に過去一番の、この至上の喜びを味あわせてくれた子がいます。
それは遡ること、学習塾事業部時代。中3の受験学年を担当していたときの子です。
S藤くんという男子がおりました。この子は仁尾が中1のときからずっと担当をしてきていた子でしたが、何しろ勉強が大嫌いで、中1で英語の成績はなんと「1」中2でも「1」。
その他の科目だって1~3のオンパレード。神奈川の入試で「1」がつくと流石に公立受験は難しくなる…。いい子ではあるんですが、いかんせん、英語を理解してくれない。宿題もやって来ない。中3の最初の中間テストも散々。中3なのに三単現が理解できない。
そこで仁尾は決意の夏期講習。
「中3基本英文法ゼミ」という単科講習(定員30名)に、このS藤くんとO塚さんという女子の二人だけにしました(この子も同レベル…)。定員を2名に絞って仁尾自身が個別形式をやることにしたのです。(他の子達には別のゼミを提案し、売上は確保(笑))そのゼミの中で、彼につきっきりで、4日間で宿題含めて2年半分の英語をみっちり150ページ付き合いました。その中で、彼は漸く三単現を理解し、その御蔭で過去形もわかるようになり。わかると意欲が出るらしく、過去形や過去分詞形を暗記し、「先生、なんか英語わかってきたかも…。」というセリフを引き出すに至りました。そのかいあってか、中3での英語の成績は「2」に上昇。なんとか志望校に届くまでに至り、志望していた(といってもそこしかなかった)私立高校に進学が決まりました。本当に良かった…。
そして時は過ぎ、彼がなんと大学生になって遊びに来ました。そして近況を聞いて耳を疑いました。有名私大の英米文学科に進学したんだそうです。エイベイブンガクカ???
ちょっと何言ってるかわからない。とても間抜けな顔をしていたと思いますが、本当に信じられなかったのです。そして更に1年後…。また衝撃の事実が。なんと学部でトップの成績を修め、英語の論文が表彰されたというではありませんか。これにはホントに驚きました。仁尾の中では、「I am a pen.」とテストで書いた印象しか残ってないわけですから。
卒業後も仁尾に連絡をくれて、就職は日産自動車の海外営業部に決まったと報告してくれました。もう、驚きません。彼は、ターニング・ポイントはあの「基本英文法ゼミ」だったと語ってくれました。あそこから英語を好きになれたと。この仕事をしていて、こんなに嬉しい言葉はありません。彼はQゼミでまさに「変わった」のです。