NO8-1 受け持つ子どもの名前をすべて覚えることが「できる」
さて、クイズです。CMのナレーションです。何の宣伝でしょうか。
母子手帳に『佐藤だいすけ、佐藤だいすけ』と連呼しながら丁寧にわが子の名前を書いています。おむつに『だいすけ、だいすけ、だいすけ』と、名前を書きながら連呼するテレビCM。『キミの名前をたくさん書いた。願ったり、叱ったり、祈ったり・・・親の気持ち、ちゃ~んとわかってくれているのかなぁ~』と、青年になった息子を送り出す母親がいます。
どこのメーカー、ブランドのCMでしょうか?
CMは限られた時間でSomethingを伝える芸術だと感じる時があります。
その子の名前を一番発する人は、多くの場合父親と母親。
私たちは「親・代行業」として、親御さんの次にその子の名前をたくさん呼んであげる存在です。
このCMの最後のナレーション
『名前はいちばん短いラブレターだと思う・・・』
う~ん、素晴らしい!秀逸なCMです。はい、答え-CM主はPilot。
現場力の経験則(一人前の「できる」)の先頭は、「名前を覚える」。
え?名前を覚える?そんな簡単ことですか?なんて声が聞こえそうですね。そうです。“マジカルナンバー7の法則”によれば、短期記憶の容量は、7人プラスマイナス2といわれています。「名前を覚える」作業ならば、つまり5人から9人ぐらいまでは、即効で覚えられるかもしれませんね。
しかし、この簡単の事を、軽く考えてはなりませぬ。
私たちは、通常5名から20名程度のクラス・チームを運営します。出逢ったその時間、その日のうちに、子ども達の名前を覚えることがすべてのスタート。繰り返し、繰り返し、受け持ちの子どもの名前を連呼するのです。
事前に予習は必須です。名札を揃える、個人カルテ(健康状態など事前情報)を確認する、これらはイロハのイ。
ただ、対象が10人以上になると余程記憶力が良い指導者以外、「名前を覚える」ことに完璧とはいきません。
そんな時は、たとえば「自己紹介ゲーム」などでクラスの雰囲気を和らげると共に最初の関門である“子どもの名前を覚えること”が「できる」ようにするための時間に余裕を持たせます。名前を呼ばれる、名前を呼び合うことで、人間関係の距離が縮みます。
子供(生徒)同士で名前を覚えさせる工夫もしたいところ。「〇〇くん」「〇〇さん」と呼び合うようにするとクラス作りはスムーズに進みます。
ここで、重要なことがあります。
子ども達の名前を覚えることと同様に、あなたの名前を子ども達に覚えさせることも忘れないようにしましょう。「〇〇先生は、〇〇と呼んでください・・・」とニックネーム(職場ネーム:指導者ネーム)などで、これまた連呼するのです。
“先生の名前を覚えさせず-だから子ども(生徒)は、先生の名前を知らず、言えず”というのは、最悪・最低の出会いイベントです。
やはりここでもニックネームは威力を発揮します。ニックネームは、いわば芸名(笑)。あなた自身に本名とは別の芸名(ニックネーム)をつけることで、素の自分ではない人格になれます。これって、意外と重要な事です。なぜならば、あなたの潜在的な能力を引き出すキッカケになる可能性があるからです。人格が少なくとも二重になる(もちろん病的な二重は困りますが・・汗)、つまり幅も広がるわけです。
ただ、理究では、この件に関しては統制せず不徹底なため、芸名的ニックネームよりも、だんだん愛称的なニックネーム(=本名のアレンジ)が増えてきた感があります。私自身が少々反省しています(泣)
まぁ、このいい加減さが自由で良いとも言えるのですが(汗)
“教師の五者論”というのを大学時代の「教育原理」の授業で習った記憶があります。教師は、「学者、医者、役者、易者、芸者」の五つの役割を持て、という内容でした。「オイオイ、そんなことできるんかい!」って印象でしたが(笑)。「五者論」の出典は明らかではありません。昭和時代の教師聖職論がまだ残っていた頃の名残でしょうね。
「五者論」は、徐々に学校の先生よりも、むしろ塾講師に求められてきました。塾講師は“人気商売”。塾講師(幼児教室の講師も含めて)には「学者」のような知識が求められ、進路指導や進学指導は、自信のない生徒や御父母に向かって、時には「易者」のような振る舞いをし、「役者」や「芸者」のように授業を引き付ける・・・昭和から平成にかけてでしょうか。結婚式には学校の先生ではなく、塾講師が招待されるような時代になってきました。
さて、先ほどから名前を連呼、連呼と執拗に言いました。なぜでしょう。その心は・・・連呼すると“れんこ”“れんこ”“れんこン”・・・のように穴が開いて見通し、風通しが良くなります(汗笑)。
先ずは、子供と指導者との距離を、壁を取り除くのです。