NO10 指導原則
・教育技術法則化運動
・GIGAスクール構想
・「教育効果」の最大の要因
・効果的な指導原則
1. (イ) 意欲優先の原則
2. (メ) 目的提示の原則
3. (シ) 指示明確化の原則
4. (カ) 簡潔化の原則
5. (ノウ) 能力把握の原則
6. (ジョウ) 情熱指導の原則
教育技術法則化運動
教育業界は、1984年から2001年に公立の小学校教員だった向山洋一 氏らが提唱した「教育技術法則化運動」が、ちょっとしたブーム。私たちは、偶然にも時を同じくして(笑)“幼児教育での指導書(=イントラ)”“学習塾での基本授業”などの統一化、マニュアル化を推進していました。
今でこそ、全国に展開する幼児教室30拠点で同じ指導書(=イントラ)を活用していますが、それまでは、私たち講師(=指導者)は各自それぞれの考え方で好きなように指導書・授業案を作成していました。
「統一化、マニュアル化」などと偉そうに言いましたが、それは必要に迫られたからです。そうしなければ、私たちとの提携を求めていたユニ・チャームさんの“全国100教室展開プラン”を可能にする商品にならないからです。よって、組織一丸となってイントラや教材、講師研修システムを構築せざるを得ませんでした(汗)。そこが、「教育技術法則化運動」との大きな違い(笑)
「教育技術法則化運動」は、全国の公立小学校の熱心な教師に支えられ一時代を形成しました。基本理念は下記の4点。
① 教育技術はさまざまである。できるだけ多くの方法を取り上げる(多様性の原理)
② 完成された教育技術は存在しない。常に検討・修正の対象とされる(連続性の原理)
③ 主張は教材・発問・指示・留意点・結果を明示した記録を根拠とする(実証性の原理)
④ 多くの技術から、自分の学級に適した方法を選択するのは教師自身である (主体性の原理)
「教育技術法則化運動」の狙いは、指導技法の共有と、交流による絶え間ない進歩によって、徐々に教育界全体の水準を向上させることができる、孤立無援状態の教師を救い、それが結局児童・生徒の役に立つ。・・・と、私は理解しています。
効果的な教育法に関する研究の数は膨大です。ただ、学習指導の手法は指導者(=講師、教師、リーダー)によって千差万別。しかも教室という閉鎖された空間で行われ、毎日泡のように消えていきます。「品質向上」は限りなく夢物語の絵空事。公教育の危機が叫ばれる理由がありました。「教育技術法則化運動」は、その現状に対しての挑戦だったのです。
教育現場で必要とされる問いは、
「どうやれば跳び箱を跳ばせられるか?」
「どうやれば音読を上達させられるか?」
「どうやれば計算を速く、正確にさせられるか?」
「どうやれば感想文を書くようにできるか?」などなど
目の前にいる一人ひとりの生徒の「学習成果」を引き出したいのです。教員養成大学では、理論や知識などが中心で、実践的な技術指導は重要視されません。いや、基本的に皆無。なぜならば、大学の教授たちは研究者であって教育実践者ではないのです。よって、大学を卒業した新米教員が各自に研究し、会得するしかない訳です。(最近の大学のカリキュラム事情は不明ですが)
料理にたとえるなら、
「米は研ぐ、水分に浸す時間を取ってから炊いた方がおいしい」
「みそ汁を作る時の味噌は、沸かすと香りがとぶ。ぐつぐつ沸かさない」「和食調味料は、さ(砂糖)・し(塩)・す(酢)・せ(醤油)・そ(味噌)」といった基本的な知識が共有されておらず、料理する一人ひとりが試行錯誤の末にいちいち発見しているようなものです。甚大な時間と知的エネルギーが費やされる。大変な無駄です。
「教育技術法則化運動」のその後についてはケアしていませんが、21世紀になった今でも、教育業界にとって普遍的な意義があると感じています。
「保育・教育サービス業」を営んでいる理究グループでも、当然ながら“品質向上”という大きなテーマに取り組んでいます。
たとえば保育事業部では、「コトバの森・能力開発プログラム」を通じて、保育士に“幼児教育スキル”を習得させ、進歩を促す研修に着手しています。さらに、2021年度から幼児たちを引き付ける、楽しませる、集中させる「技・シリーズ」を全園の保育士研修に導入します。保育士たちの主要な任務は、“安全、安心できる保育”“親代行業としての役割”であることに変わりはありません。それにプラスして保育士一人ひとりが、自信を持って子供たちと楽しみながら仕事ができる、きめ細かな保育ができるよう支援をすること、保育士の成長を担保し見守ることが、保育園を運営している法人の責務です。なぜならば、保育環境が子供たちの心身や頭脳の育成に影響をもたらすからです。保育士は、その保育環境の重要な要因なのです。幼子たちの未来の問題。“未来創造支援業®”を唱えている理究グループの出番です(笑)。
幼児教育事業部では、「指導の見える化」に取り組み、それを毎月の運営要項に積極的に掲載することで、スタッフ全員にオープン化させています。幼児教育という、まだまだ未開発な領域が多く存在します。日本の大多数の園児は公立小に入学します。全国レベルで考えると2%~3%程度の幼児が国立・私立小学校を受験します。親御さんのよりよい学校への「自由な選択」が入試です。が、人気校は狭き門。親御さんの求めに真摯に応えていかねばなりません。その為にも「指導の見える化」に磨きをかけることが、良質な指導やサービスの提供につながると考えています。私・国立小学校入試合格者数として21年連続「神奈川NO1」は、私たちの誇りある実績です。次なる目標は、首都圏NO1。もちろん、あくまでも努力の結果としての実績です。数字だけを追うつもりは毛頭ありません。
「教育技術法則化運動」の理念の①~③は、私たち民間教育事業者にとっても大いに参考になります。多くの指導者が納得する意義だと思います。ただ、④に関しては議論の余地があります。ある種の“気合”-教師自身が責任を持て-としては同情します。ただ、現実には指導者(=教師、講師、リーダー)の力量の違いがあまりにも大きいのです。それを無視してすべてを教師自身に委ねることには躊躇します。教師(=指導者、講師、リーダー)が“教え方を選ぶ権利”を守り続けて良いのか、“より良い授業方法”をなぜ採択させないのか、という疑問が湧くのです。