NO10-2 目的提示の原則
学習に対する児童生徒の興味・関心を高め、学習効果を加速するためのICT活用が、文科省が推進する「GIGAスクール構想」で、格段に増していきます。
どんな学習をするのかの全容を「映像」や「わかりやすい資料」などで示されれば、児童・生徒は意欲的になる可能性が高まります。つまり、「目的提示の原則」は、NO10-1の「意欲優先の原則」とも連動する原則です。
ハイキングを想像してみましょう。
「さぁ、ハイキングしよう。これから歩くよ」と、漠然と歩き出す人はいませんね(笑) 。今までならば、ハイキングコースを設定して「今日は、横浜駅からみなとみらいを通って、赤レンガまで行こう。おおよその時間は40分。赤レンガ倉庫で10分休憩してから山下公園までいくよ」などと口頭説明で済ませていたでしょう。初めてみなとみらいを散策する人には全くイメージが湧きません。ただ、金魚の糞ごとく付いていくだけとなり、何のためのハイキングなのか意味が薄れてしまい、学習としてはいささか勿体ない。
ICT機器の進化により、地図や衛星画像・航空写真などを拡大提示することが、いとも簡単にできる時代になりました。ICT機器を活用するスキルは、学習効果をアップさせる上で重要な要因になります。それを利用して、
どのようなルートをとり、どのような場所を通るのか
どの辺りで注目すべきポイントがあるのか
生徒達にどう動いてもらいたいのか
をできるだけ的確に表現することができます。児童・生徒たちに「見通し学習」をさせることができるのです。参加させる意欲を喚起させることもできるし、学習の全体像を示されれば、メンタル的にも安心します。
中学1年生で学習する「1次方程式文章題」導入で考えてみましょう。
『今日から3日間で1次方程式文章題のイロハを伝える。ここに示すように6つの基本的なパターンがある』と、黒板にプロジェクターで6つのパターンをバーンと示す。
『先ずは、最初の5分で計算方法の復習をするよ。ポイントは2つだったね。ゆっくり確認するから大丈夫だ。次の30分で文章題をやる。今日は、1次方程式の基本的な6つのパターンの中の、2つだけをやるよ。だから1問は10分~15分程度。よし、深呼吸だ』と聞かせる準備をさせる。
例題を説明した上で
『では、類題をやってみよう。文章をじっくり声に出してみよう。慣れないうちは戸惑うかもしれない。2、3問やれば慣れてくる。何が書いてあるのか理解できればOK。次に何が未知数なのかがわかれば基本はクリア。最後に立式して方程式を解く』
“何を学ぶのか”をはっきりさせること。“成功の基準”を示してやること。ゴールが示されれば頑張れる。その子にとっての“ゴール設定を示してやること”が大事。小学生では「今日の授業メニュー」などと授業目次を提示するやり方もあります。学習は、楽しい事ばかりではありません。基礎基本を習得するのは訓練ですから、辛い、厳しい時の方が多いでしょう。だからこそ、「今日の目的は○○だよ」と「今日はこれをやるよ」と伝える事です。中学生であれば、定期テストに関心が向くので、過去の出題例を頻度別に見せるのも効果的。
学年が上がるごとに(中学・高校生)自分はいったい今どこにいて、どの方向に向かうのか不安になる傾向が強くなります。それは体育会系の部活でも勉強でも同じ。だから、対外試合をして自分やチームの実力を推し量ったり、模擬試験をして偏差値を確認したりするのです。
「NO10-2 目的提示の原則」とは、広く解釈すれば、指導者がナビゲーターになることも意味します。児童・生徒にはいろいろなタイプの子がいます。自分でどんどん進める子は行かせればいい。臆病な子には丁寧に誘導する事も必要になるでしょう。